Adobe Firefly 活用事例・留意点

概要

Adobe Fireflyは、Adobe製品に新しく搭載された画像生成AIです。
約6カ月間のベータ版の提供を経て、2023年9月13日に「Adobe Firefly」の正式版が公開され、商用利用が可能となりました

Fireflyは同社のストックフォト「Adobe Stock」にアップされている許諾済み写真や、一般に公開されているライセンスコンテンツ、著作権が執行しているパブリックドメインの画像などを中心に学習しています。

機能

日本語を含む100以上の言語文章から画像を生成できるText to Image の他、既存の画像から一部や背景を消して指示した内容で置き換える「生成塗りつぶし」、写っていない・描かれていない部分まで広げる「生成拡張」、指示した内容やスタイルで文字列を描く「テキスト効果」などの機能があります。

💡Adobe Fireflyでできること

・Text to Image
・生成塗りつぶし
・生成拡張
・テキスト効果
・生成再配色
・3Dから画像生成

📌使用できるアプリケーション

FireflyはWeb上で使える単体アプリの他、Adobe Creative Cloudの各アプリにネイティブ統合されており、こちらでも利用できます。
現在Firefly機能が導入されているのは、Photoshop、Illustrator、Adobe Express、およびAdobe Stockです。

特長

📌生成クレジット

Fireflyはコンテンツ生成に使用できる「生成クレジット」が月単位で割り当てられます。

契約者は毎月生成クレジットの範囲内で、Fireflyによる生成AIコンテンツを作成可能となります。プランごとに定められた生成クレジットの利用上限に達した場合でも、処理速度が低下した状態で画像やテキスト効果の生成ができるようです。
クレジット以上の利用については2023年11月以降、ユーザーが追加の生成クレジットを購入できるようになる予定です。

生成クレジットのカウントは毎月リセットされます。

なお、月間の生成クレジットの割り当ては、各サブスクリプションの割り当ての合計で、生成クレジットの残高は翌月に繰り越されません。

プラン名 生成クレジット
無料ユーザー 25
Creative Cloud コンプリートプラン

1000


クレジット生成の使用量は、生成された出力の計算コストと、使用されるAI生成機能の値によって異なります。

💡生成クレジットが引き落とされるアクションの例

・テキスト効果で「生成」を選択
・生成塗りつぶしで「その他」を選択

機能 生成クレジット使用
生成塗りつぶし、生成拡張、テキストで画像作成、生成再配色 1 クレジット
テキスト効果

• 2023 年 11 月 1 日より前:0 クレジット

• 2023 年 11 月 1 日以降:1 クレジット

 

📌ポリティカルコレクトネスに対応

ポリティカルコレクトネスとは、社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指します。

Fireflyは、意図せず誰かを傷つけるような表現を除外するように設計されています。例えば、ポルノや差別的表現、暴力的表現などです。
これら表現が含まれる画像は生成されないようになっています。

 

📌著作権について

Adobe Fireflyの最大の特徴は、著作権問題をクリアした画像生成AIという点です。

通常、画像生成AIによるコンテンツには著作権的な問題がつきまといます。
たとえば、サービスの提供者が「この画像生成AIは商用利用可能です」とうたっていても、それは著作権的にセーフというわけではありません。既存の著作物との間に類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害が成立します。
また、AIによって生成されたコンテンツの著作権は誰にあるのかなどもまだ結論が出ていません。

しかし、Adobe FireflyはAIの学習に権利関係を精査した素材だけを使用しており、あらかじめ知的財産権の問題をクリアしているので、生成する画像が著作権を侵害する心配はなく、安心して商用利用できます。

また、Adobeは著作権侵害への対策として「Do Not Train」タグの導入を予定しています。「Do Not Train」タグとは、クリエイターのデジタル作品をAIの学習に使わせないようにする機能です。
Adobeとクリエイターの双方が、コンテンツの著作権を意識することで、Fireflyの透明性の更なる向上が期待できます。

さらに、2023年6月8日のプレスリリースでは、Fireflyで作成した画像が、商用利用できる点について強調すると共に、知的財産として補償する旨をAdobeは明言しています。
つまり、Fireflyを利用して生成した画像が、著作権を侵害したとして訴訟されても、Adobeが金銭の負担をすることを意味します。したがってFirefly登場により、コンプライアンスに厳しい大手企業などでも、画像生成AIツールの利用を検討できます。

 

まとめ

商品やサービスの広告素材やコンテンツを個々人に最適化することで、顧客体験を向上させ購買につなげる施策であるパーソナライゼーションが進んでいくことによって、必要とされる画像素材は指数関数的に増えていくことが今後予想されます。
そのような場合でも、Fireflyの活用により短時間で数千パターンのバリエーションが生成可能なため、制作の効率化は飛躍的に進んでいくはずです。
今後はAIなどのツールを上手にハンドリングし、コントロールできるクリエイターが活躍の場を広げられるのではないでしょうか。

▼参考文献
https://www.adobe.com/jp/sensei/generative-ai/firefly.html
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202303/20230321_adobe-unveils-firefly.html
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202306/20230608_firely-and-express-to-enterprises.html
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf